大同特殊鋼ハンドボール部の基本方針である『世界に通用するハンドボールチームを創る』べくオリンピックの試合を観戦し、選手の心技体や戦術を学ぶため8月7日から14日にわたりロンドンに乗り込んだ。我らがフェニックスからは清水総監督をはじめ、末松監督、棚原、久保、加藤の3選手が世界トップレベルの試合を肌で感じた。
今回は、その内容をお届けします。
アイスランド VS ハンガリー(準々決勝)
北京オリンピック2位のアイスランドは、2対2の攻撃からの展開が多く見られた。 ポストプレーヤーが非常に大きく、どんなパスでも必ずキャッチする印象を感じた。 またセンタープレーヤーが広い視野でパスを捌き、自ら得点できる能力が高く、センターが起点となる攻撃であった。 守備は高めの6-0システムで、ポストの受け渡しのチェンジミスがあったが、3枚目のピストンが良く連動し、ファールを多くとっていた。
北京オリンピック不参加のハンガリーはアイスランドディフェンスに対してサイドでの得点を奪う攻撃。 しかし、勝負所ではポストを中心に加点していた。 また、サイドシュートの技術が高く、角度の低いところでも得点をあげていた。 守備ではポストの受け渡しをしっかり行い、キーパーとの約束事を徹底(サイドシュートまで持っていく)しているように感じた。 最終的には後半でも速攻を押し続けていたハンガリーが勝利した。
デンマーク VS スウェーデン(準々決勝)
北京オリンピック7位のデンマークはエース ニケル・ハンセン中心のチーム。 エースへのマンツーマンディフェンスをされると攻めあぐみ、イージーミス、シュートミスが多発した。 守備では3枚目ピストンで積極的にファールをとりにいくが、パッシブプレー寸前にシュートを打たれて決められる場面が多かった。
北京オリンピック不参加のスウェーデンはデンマークのミスを確実に点数につなげていた。 2対2からの展開が多く、センターがゴールキーパーのタイミングを外すシュートを多く決め、リズム良く試合を進めていた。 結果は相手のエースを封じたスウェーデンが勝利した。
スウェーデン VS ハンガリー(準決勝)
スウェーデンは守備から速攻の展開が多いチームである。 また、大型ポストの起用により大事な場面では攻撃パターンを統一し、ポストを中心に攻撃していた。 途中に攻撃が単調になり、イージーミスが発生してしまう場面もあったが、勝負所では確実に得点した。 守備では相手のリズムを崩そうと変則ディフェンス(5-1)をとったが、マークミスにより簡単に得点されるケースも多く見られた。
ハンガリーは、積極的に速攻には走らないが、じっくりと攻撃を統一し効率よく得点をあげていた。 この試合でも素晴らしいサイドシュートテクニックを披露し、高い技術を見ることができた。 結果は最終局面で相手のミスを速攻につなげ、確実に得点を決めたスウェーデンが勝利した。
フランス VS クロアチア(準決勝)
北京オリンピック優勝のフランスはミスが究極に少なく、バックプレーヤーがポストの位置を把握しながら攻撃を展開していた。 センターのパス捌きが速く、相手守備を揺さぶり弱い所を的確に攻撃していた。 この日、一番印象が強かったのはゴールキーパー。何本ものノーマークシュートを止めるなど驚異的なセーブ率を誇り、守備全体に安定感が出ていた。
北京オリンピック4位のクロアチアはシュートを決めきれず、終始リズムが悪いままの展開であった。 しかし、クロアチアのエース バリッチがコートに立った時は、彼の素晴らしいアシストで得点を重ねていた。接戦でフランスが勝利したが、クロアチアも終始良いリズムで試合を進めていた。
フランス VS スウェーデン(決勝)
決勝は2連覇を目指すフランスとシドニーオリンピック以来の決勝進出となったスウェーデン。フランスは立ち上がりからファールを多くとられ、なかなかリズムをつかめなかったが、途中交代の選手(フェルナンデス)がミドルシュートの連打で流れをつくり、確率の良いポストシュートや広いスペースのサイドシュートで加点した。守備では3枚目ピストンが速く、連動がとれており、最終的にはゴールキーパーが止めるなど、この試合も安定感のある守備が見られた。
スウェーデンは走り込みながらのミドルシュートや、クロス攻撃からの広いスペースでのポストを使いながらバランスよく加点していた。 守備では勝負所で変則システム(5-1)を使用し、フランスの攻撃リズムを崩しながら試合を進めた。
試合結果は、最終局面でスウェーデンが1人退場と、シュートミス、逆にフランスは相手の ミスを確実に得点につなげ、最後はベテラン選手の活躍でオリンピック二連覇を成し遂げた。
棚原 良 選手
ロンドンオリンピックの視察は選手の心、技、体を間近で見ることができ、多くのことを学ばせてもらいました。
基本の大切さ、フィジカルの重要性、そして何よりチームのためにファンのために戦うといった姿勢が見られ、私の中で大きな変化が得られました。
また、とても重要だと感じたのは速攻です。今回どのチームも速攻は少なかったのですが、速攻が出ているときは攻撃のリズムが凄く良く、 ヨーロッパの選手が速攻で押してくる脅威は素晴らしいものです。やはり速攻で点数を取れているときはリードし勝利につながっており、 速攻の重要性を更に感じ、フェニックスでも守備から速攻のカラーをより強く学んだことを活かしていきたいと思います。
久保 侑生 選手
今回見たどの試合でも感じたこととして、世界トップレベルの試合では速攻のスピードが速いと感じたことです。マイボールになってからワンパス・ツーパスでシュートまでいくシーンを多々見ることがあり、切り替えの速さが今の日本と明らかに違うと感じました。 また、オフェンス時にはどの選手も必ず前を狙ってからパスを出しているため、ディフェンスを引きつけることが出来ていました。
モチベーション面としては、一人ひとりが自分のプレーや味方のプレーに対しての喜び方やパフォーマンスの仕方が大きく、個人・チームに勢いを与えており、今後は自分から発信することで真似していきたいと思います。
その他には、毎試合満席近いファンが観戦に訪れ、盛り上がり方も今まで感じたことのないくらいのものであり、ファンの多さが選手のモチベーションへとつながっていると感じ、ヨーロッパのハンドボールの強さにもつながっているのではないかと感じました。
加藤 嵩士 選手
今回初めて生でオリンピックの試合を見ましたが、会場は各国のハンドボールファンで埋め尽くされ、 日本では経験したことがない雰囲気を体験することができました。実際に観戦し、 世界の人達があんなにもハンドボールを好きな理由がわかりました。選手のプレーはダイナミックでスピードも速く、 そして目を見張る技術力があるだけでなく、闘志をむき出しにプレーをしているので、 これだけの人をハンドボールに惹き込んでいるのだと感じました。
全6試合を観戦して、どの国の選手も本当にミスが少なかったです。攻めも粘り強く確率の良いところまでもっていっているし、 能力の高さだけでなく、基礎力があるからこそ、あのダイナミックなプレーなんだと思いました。今後、日本一に向けて練習を行う中で、 大同の基本理念にもあるように基礎を大切にして、今回の視察で自分に足りないと感じた部分を強化し、感じたことを表現していきたいと思います。 個人的にも、オリンピックという最高の舞台に立てるように、努力していきたいと思います。
Aグループ | 勝 | 負 | 分 | 点 | |
1位 | アイスランド | 5 | 0 | 0 | 1 |
2位 | フランス | 4 | 1 | 0 | 8 |
3位 | スウェーデン | 3 | 2 | 0 | 6 |
4位 | チュニジア | 2 | 3 | 0 | 4 |
5位 | アルゼンチン | 1 | 4 | 0 | 2 |
6位 | イギリス | 0 | 5 | 0 | 0 |
Bグループ | 勝 | 負 | 分 | 点 | |
1位 | クロアチア | 5 | 0 | 0 | 10 |
2位 | デンマーク | 4 | 1 | 0 | 8 |
3位 | スペイン | 3 | 2 | 0 | 6 |
4位 | ハンガリー | 2 | 3 | 0 | 4 |
5位 | スロベニア | 1 | 4 | 0 | 2 |
6位 | 韓国 | 0 | 5 | 0 | 0 |



